企業の自社物流と物流企業の現場の違い
― 物流アウトソーシングで、本当に見るべきもの ―

メーカー・卸売業・小売り業などが自社で運営する物流センターと、物流企業が運営する倉庫・物流センター。
商品を入荷し、保管し、必要な商品をピッキングし、出荷する。
基本的な業務だけを見れば、やっていることはよく似ています。
しかし、私はこの二つの現場は、似ているようで性質がかなり違うものだと考えています。
なぜなら、そもそも物流現場に求められている目的が違うからです。
■ 自社物流は「自社に必要な物流」を追求する
メーカーなどの物流現場は、当然ながら自社の事業を支えるために存在しています。
扱う商品、販売先、受注形態、物量の波、納品条件、品質基準なども、基本的には自社の事業によって決まります。
「この商品だけは特別な管理が必要」
「この得意先だけ納品条件が違う」
「月末になると物量が急増する」
「多少手間が掛かっても、この顧客にはここまで対応する」
こうした自社特有の事情を前提として、物流現場を作ることができます。
そのため、物流現場だけを見れば、一見非効率に思える運用が残っていることもあります。
しかし、それが必ずしも悪いとは限りません。
例えば、重要な顧客から特殊な対応を求められていたとします。物流現場から見れば、作業効率を落とす原因かもしれません。それでも、その取引によって会社全体として十分な利益が得られているのであれば、経営としては合理的な選択になり得ます。
つまり自社物流では、
「物流として最も効率的か」ではなく、「自社の事業にとって最適か」
という判断ができます。
ここが、自社物流の大きな特徴だと思います。
■ 物流企業は「顧客満足」と「収益」を両立させなければならない
一方、物流企業の現場は少し事情が違います。
物流企業にとって物流そのものが商品です。
しかも、多くの場合、一つの物流センターの中で複数の荷主の商品を扱います。
荷主が違えば、商品も違います。
入出荷の方法も違う。
納品条件も違う。
繁忙期も違う。
求められる品質やサービスレベルも違います。
物流企業は、こうした異なる要望に対応しながら、人員、スペース、設備、車両、システムなどを効率的に活用し、利益を出さなければなりません。だからといって、すべての荷主の要望に合わせれば良いわけでもありません。荷主ごとに個別対応を増やしていけば、作業は複雑になり、標準化が難しくなります。生産性が低下し、結果としてコストが上がる。
反対に、自社の効率ばかりを優先すれば、荷主が必要としているサービスを提供できなくなります。
つまり物流企業には、「個別対応」と「標準化」を両立させるという難しい仕事が求められます。
■ 物流企業にも、それぞれの「物流の型」がある
ここで重要なのは、物流企業と一括りにして考えないことです。
長年、食品物流を扱ってきた会社。
ケース単位のBtoB物流を中心としてきた会社。
多品種少量の商品を得意としてきた会社。
流通加工を強みにしている会社。
輸配送を中心に成長し、そこから倉庫業へ展開してきた会社。
EC物流を中心としてきた会社。
それぞれの会社には、これまで積み重ねてきた仕事があります。
その経験の中で、設備、人員配置、システム、管理方法、作業方法、さらには「何を重要と考えるか」という考え方まで形成されていきます。
私はこれを、その物流企業が持つ「物流の型」だと考えています。
同じような規模の倉庫を持ち、同じような設備を導入していたとしても、中身まで同じとは限りません。むしろ実際の現場を見ると、それぞれかなり違います。
■「良い物流会社」を探すだけでは不十分
物流アウトソーシングを検討するとき、
「どこの物流会社が良いのか」
という話になりがちです。
もちろん企業としての信用力、価格、立地、設備、システム、実績などを比較することは必要です。しかし、それだけで委託先を決めることには少し危険を感じます。
大手だから自社に合うとは限りません。最新の設備があるから自社の商品を効率的に扱えるとも限りません。同業他社が利用して高く評価している物流会社であっても、自社にとって同じ評価になるとは限りません。
大量の商品を高効率で処理することに優れた物流会社が、多品種少量で細かな個別対応を得意としているとは限らないからです。反対に、大規模な自動化設備は持っていなくても、顧客ごとの細かな変化に柔軟に対応することを得意としている物流会社もあります。
これは「どちらが優れているか」という話ではありません。
得意とする物流が違うのです。
■ アウトソーシングは「物流の型」をすり合わせること
自社物流には、自社の事業によって作られてきた物流があります。
そして物流企業にも、長年の経験によって作られてきた物流があります。
私は物流アウトソーシングとは、単純に
「今まで自社でやっていた物流を、そのまま外部へ出すこと」
ではないと考えています。
自社が必要としている物流と、物流企業が持っている「物流の型」をすり合わせること。
ここが非常に重要です。自社の物流を無理に物流企業のやり方へ合わせれば、必要なサービスが失われるかもしれません。
反対に、自社物流で行っていたことをすべてそのまま物流企業に要求すれば、委託するメリットそのものを失ってしまう可能性があります。
「自社として絶対に守らなければならないものは何か」
「物流企業のやり方に合わせても問題のないものは何か」
「むしろ物流企業のノウハウを取り入れた方が良いものは何か」
それを双方で整理することが、アウトソーシングのスタートではないでしょうか。
■ 物流企業も「100社100様」
私は、物流企業には大手・中小を問わず、それぞれの特性があると思っています。
まさに100社100様です。
だからこそ、自社物流のアウトソーシングを検討する際には、ネット上の情報や知名度、価格、あるいは同業他社からの評価だけで判断することはお勧めしません。
実際にその会社を訪れ、自分の目で現場を見る。担当者と話をする。
自社の商品や物流について伝え、それに対してどのような考え方や提案が返ってくるのかを確認する。
そして、「この会社は良い物流会社なのか」ではなく、
「この会社は、自社の物流を任せるパートナーとして適しているのか」
という視点で評価する。
物流企業を選ぶということは、単なる業者選定ではありません。
自社の事業を支える物流を、共に作っていくパートナーを選ぶことでもあります。
だからこそ、最後は自分自身の目で確かめる。
それが、物流アウトソーシングを成功させるための大切な一歩だと私は考えています。



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