中東情勢で変わる物流の前提
- zassoukh04
- 4月28日
- 読了時間: 7分
~「効率化」から「止めない設計」へ。今起きている変化とその対策~

最近、中東情勢を理由に「物流コストが更に上がっている」事を体感している人は多いと思います。ただ、現場で見ていると問題はそこだけではありません。
物流が「止まるかもしれない」という前提にフェーズが変わってきているというのが一番大きな変化だと感じるのです。
原油価格の上昇やナフサ不足、輸送の不安定化。これらは単なるコスト増ではなく、「物流の考え方そのもの」を変え始めています。
今回は、できるだけ専門用語を使わずに、
何が変わっているのか
なぜ問題なのか
何をすればいいのか
を私なりに記してみたいと思います。
1) 物流はなぜ「止まるかもしれない」という前提になったのか
まずはここを理解しないと、「止めない設計」への変化の意味が分かりません。
これまでの物流の考え方は、ある意味とてもシンプルでした。
在庫はできるだけ減らす
倉庫は集約して効率化する
人は必要最低限に抑える
つまり、無駄を減らせばコストが下がる・・・というのが多くの企業が取る戦略でした。
そして、実際にこのやり方で多くの企業は効率化に成功してきましたし、今現在もそれを進めている企業が多く存在していると思います。
しかし、この効率化戦略には前提条件がありました。
原料や資材は計画的に予定通りに入手できる
トラックは予定通りに来るし、直ぐに手配が出来る
人手不足が懸念されるが、マテハン等導入で対策すれば必要数確保に問題はない
そして、「5年後、10年後もそれが変わらない」という考えが意識的、無意識的に存在していました。しかし、「 今」はその「前提」が崩れてしまいました。
現場ではこういうことが普通に起きています。
原料や資材の入荷が遅れたり、供給に制限がかかり、先の入荷が確約されていない
輸送コストの高騰、法改正、ドライバー不足に伴い運送会社が仕事を請けれない
必要な人数を確保するという事が困難になってきている
効率化が限りなく進められた現場は、この様な事が起きている中で、どんなリスクと直面しているかと言えば
今迄の適正在庫の考え方だと → 欠品が起こる
拠点を一つに集約して効率化 → 「有事」に代替が効かない
人員は必要最低限 → 数名の欠員で現場が回らなくなる
つまり、「余裕がない → 前提が崩れた時に対応が取れない」・・と、なります。
これまでは「無駄」を減らす=良い
でしたが、今は「 余裕」がない=止まる可能性がある
・・・に、シフトしたと言えるのです。
これが「物流の前提が変わった」という意味になります。
2) では、物流現場に大きな変化が起きるのか?
結論から言うと、 大きくは変わらないというのが私の見立てです。
① 現場で起るであろう変化
大手企業
原料等の仕入れが国内と異なる海外への分散
→ その分、国内は縮小・大きな投資せずに維持を重視
中小企業
大きな投資や変化は難しい
→ 仕入れや取引先を分ける事でリスク分散
拠点戦略
関西 → 震災リスクも考え東側の拠点も検討
関東 → 老朽化や人員の高齢かに対応
一見すると、中東情勢があってもなくても変わらない戦略の様に見えます。
ただし、中身が変わると考えます。
「大きく変えないが、小さく変え続ける」へのシフトです。
レイアウトや作業手順を変更
一部外注化や複数の外注先活用
一部拠点の配置や規模の見直し
等々、小さな再編が繰り返される様になると考えるのです。「前提が覆される様な事が起き得る」・・・という事を体験している以上、「リスク回避」を想定するにしても「限界」があります。「5年後何が起きてるか予想がつかない」という状況です。回収に時間がかかる大きな投資はリスクが高まります。特に「物流」に関しては「攻める」事自体が「リスク」となります。ただ、「今のままはリスクが高すぎる」という事が言えるので、小さく変化を続けていき、「様々なリスクに耐えうる」機能の確保を重要視するべきと考えるのです。
3)とはいえ、日本の現場は強い(しかし、それを頼るのは危険)
日本の物流現場は強いです。例えば東日本大震災やコロナ禍においても、物流現場の頑張りと強さがどれだけ救いになったかは測りしれません。世界に誇って良いと私は考えてます。
しかし、それこそが危険な誤解を生みやすいポイントでもあります。
① 実際の現場
想定外が起きると「団結してまとまり、ムリをしてでも現場を回し、なんとかする」・・・という強みがあります。これは物流に限らず、日本人の特性だと思います。
これは、短期対応は非常に強いです。ただし、その後が問題となります。
有事に発揮した実力 → 平常時も無理な運用が残りやすい
有事に発揮した「人」の力 → 頼られる事で属人化が進む
「人」が疲弊する → 無理がたたる結果となる
つまり、回っているが常に危ない状態に陥ってるという事になります。
実際に私が経験した事ですが、東日本大震災の時、私の在籍していた会社の各物流センターも大きなダメージを受けました。ただ立地や構造によってダメージの度合いは拠点差がありました。大きなダメージを受けたセンターに、ダメージの少なかったセンターから応援を出す様な状況です。
有事ですからダメージの少なかったセンターも「無理」して他のセンターに応援を出していたのですが、会社は「あの震災時に、あの人数で回せた」という事実により、そのセンターの社員の人数を減らしました。これにより、そこに配属している社員は高い能力を常に求められると共に、終わりが見えないハードワークに疲弊してしまう結果となりましたし、「その拠点に配属出来る人材」も限定的になってしまいました。
効率化を進行させている状況化で、有事による「前提条件を覆す」ダメージが起これば、現場に負担が掛かります。それが「平常運転」でも同じ様な力の発揮を期待されてしまえば、耐えられる人とそうでない人に分かれます。「属人化」です。
継続・維持が難しい状況を作ってしまう事になります。
今回のナフサ不足や原油の高騰の影響を最少減にすべく、現場は無理をしている可能性が非常に高い。「火事場のクソ力(ヂカラ)」を常に求めてしまう事は避けるべきです。
4)では何をすればいいのか(現実的な対応)
その企業によって具体先は変わりますが、ポイントは「大きく変えないこと」になります。
下記、いくつか参考的なヒントを。
① 少し余裕を持たせる
最適在庫の見直し → 仕入れ困難時を想定して直ぐに困らない様に
人員に余白 → 非正規雇用のスタッフは普段の勤務体制管理の工夫で、コストを抑えながらも人数的な余裕を
② 一部だけ分散
サブ倉庫 → 出荷等の荷役対応も可能なバックヤード等(リスクが異なるエリア)
外部活用 → 地域の異なる場所に(リスクが異なるエリア)
③ 小さく試す
絞られた工程だけ変化をつける
1拠点だけ変化をつける
④ 現場が回ることを優先
効率追求にベクトル が行き過ぎない様に現実路線でKPI管理
■ 最後に
物流は設計で変わりますが、現場が止まってしまえば意味がありません。
大きな投資をしなくても、今起きている変化に対応し、リスク回避を念頭にした対策を講じる事はどんな企業でも可能です。物流を取り巻くフェーズは、この数か月で明らかに変わり、今迄前提としていた「人手不足を背景とした効率化の追求」という解り易いテーマから「何が起こるか解らない」というリスクが常にある中で「止まらない物流現場」を構築する事に変化したと考えます。
ナフサ不足も原油高騰も短期的に済む問題ではありません。大震災のリスク、法の改正、超高齢化社会という問題を抱えながら「止まらない物流」を保持する事を真剣に考え、行動を起こす必要があると強く思うのであります。
如何すれば良いか、何から手を付ければよいのか・・や、既に効率化投資を進めており、コストがこれ以上かけらない・・等々、様々な状況に応じ、対策の計画~実践をお手伝いできます。
是非、お気軽にご相談頂ければと思います。

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