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物価高時代の物流

~「止まらない物流」を実現し続けるために~


原油価格や原材料費の高騰は、製造原価だけでなく物流費にも大きな影響を与えています。企業が増加したコストを商品価格へ転嫁すれば、消費者の負担はさらに重くなります。

しかし、賃金の上昇が物価の上昇に追いつかなければ、消費者が受け入れられる価格には限界があります。

需要が落ちれば販売数量が減少し、一つの商品が負担する固定費は増加します。その結果、さらなる値上げが必要になるという悪循環に陥りかねません。

では、このような時代に求められる物流とは、どのようなものでしょうか。

その答えの一つは、コストを抑え、持続可能な「止まらない物流」をつくることです。


□「コストを抑える」とは何か


物流コストを抑えるというと、運送会社への値下げ要求や人員の削減を思い浮かべるかもしれません。しかし、それだけでは物流現場を疲弊させ、ドライバー不足やサービス品質の低下を招きます。短期的に費用が下がっても、長期的には物流が止まるリスクを高めることになります。

本当に必要なのは、物流に携わる人の利益を削ることではなく、物流全体に存在するムダを減らすことです。

具体的には、次のような取り組みが考えられます。


・積載率を高め、空気を運ぶトラックを減らす

・帰り便や共同配送を活用し、空車で走る距離を減らす

・多頻度・小口配送を見直し、配送回数を適正化する

・荷待ち時間や手作業を減らし、車両と人員の稼働率を高める

・包装や荷姿を見直し、一度に運べる商品数を増やす

・拠点や在庫配置を最適化し、不要な横持ち輸送をなくす

・需要予測や在庫情報を共有し、緊急輸送や欠品を減らす

・物流業務を標準化・デジタル化し、属人化を防ぐ


重要なのは、個々の運賃を安くすることではなく、「商品一個を消費者へ届けるまでに必要な総コスト」を小さくするという視点です。


□ コスト削減と安定供給を両立させる


在庫を極限まで減らせば、保管費は下がります。しかし、災害や交通障害、仕入れの遅延が起きたときに供給が止まりやすくなります。一方、在庫を持ちすぎれば、保管費や廃棄、値下げ販売のリスクが増えます。

必要なのは、単純な最小化ではなく最適化です。平常時の効率だけでなく、次のような事態にも耐えられる設計が求められます。


・燃料価格の急騰

・ドライバーや倉庫作業員の不足

・災害や異常気象による輸送障害

・需要の急増・急減

・特定の仕入先や物流会社への過度な依存


一定の余力や代替手段を持つことは、一見すると余分なコストに見えます。しかし、物流停止による販売機会の損失や信用低下まで考えれば、それは「ムダ」ではなく、事業を継続するための投資です。


しかし、これからの物流は「企業単独」ではつくるのは無理に近いです。

市場における企業間の競争は、これからも続いていきます。しかし、物流までを各社が個別に抱え込み、限られた人員や車両、倉庫を奪い合うだけでは、社会全体の物流を維持することが難しくなります。

共同配送や物流拠点の共同利用、荷主同士の情報連携など、物流の領域では企業の垣根を越えた「共存・協業」が必要です。

競争すべきところでは競争し、協力できるところでは協力する。その切り分けが、これまで以上に重要になります。

物流における協業は、競争をやめることではありません。むしろ、企業が市場で競争を続けるための共通基盤を守る取り組みです。商品やサービスが優れていても、それを必要とする人のもとへ届けられなければ、事業は成り立ちません。

物価の上昇、人手不足、輸送能力の制約が重なる今、従来の物流のあり方に固執すること自体が、企業にとって大きな経営リスクになりつつあります。自社だけの最適化を追求するのではなく、サプライチェーン全体、さらには業界全体で最適化を考えることが必要です。


□「安い物流」から「止まらない物流」へ


物流の未来を守るために必要なのは、「もっと安く運ぶ方法」だけではありません。「少ない負担で、無理なく運び続けられる仕組み」をつくることです。

誰かの利益や労働環境を削って実現する安さは、長くは続きません。減らすべきなのは、物流に携わる人への対価ではなく、空車、荷待ち、過剰在庫、非効率な商習慣といったムダです。そして、限られた物流資源を企業間で有効に活用し、適正な対価を支払いながら、必要な商品を届け続ける仕組みをつくらなければなりません。


物流は、止まって初めてその重要性に気づくものかもしれません。

だからこそ、止まる前に変えていく必要があります。

「安い物流」から、共に支える「止まらない物流」へ。

物流における共存・協業を実現できるかどうかが、これからの企業の競争力を左右し、ひいては市場で生き残れるかどうかを決める重要な要素になるのではないでしょうか。


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