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またサッカー日本代表について

9月29日
読了時間: 7分

~森保ジャパンが見せる“日本型マネジメント”~

W杯が終わり、日本代表は新しいフェーズに入った。

森保監督は半年間限定で続投し、その後は大岩監督へバトンタッチする。そして現在は、アジアカップ優勝という新たなミッションに向けて強化試合を行っている。

この体制については賛否両論がある。森保監督をなぜ続投させるのかという声もあれば、今回の選手選考や起用について様々な意見も聞こえてくる。W杯であれだけ盛り上がった反動なのか、「なんとなく熱が冷めてしまった」という声まで聞く。

しかし、長く日本代表を見てきた私には、むしろ今回の代表がとても面白い。

W杯終了直後の落胆もすっかり薄れ、「4年後、このチームはどうなっているのだろう」と、もう次のW杯が楽しみになっている。その理由の一つが、今回の監督交代の方法。

■ 半年限定続投という、珍しい監督交代


私は、森保監督を半年間続投させ、その一方ですでに次期監督を大岩監督に定めているという今回の方法を、とても「日本らしい」、そして理にかなった人事だと思っている。

森保監督は8年間、日本代表を率いてきた。

その間、多くの日本人選手が欧州で活躍するようになり、その人数も、所属するクラブのレベルも、選手個々の能力も大きく変化した。

もちろん、それをすべて森保監督の功績とするのは違うだろう。

しかし少なくとも、その成長過程にある日本代表を8年間率い、選手たちとともにチームを作り続けてきたことは間違いない。

そして現在の日本代表が、選手個々の能力、選手層、チームとしての完成度という点で、日本代表史上でも非常に高いレベルにあることに異論を持つ人はそれほど多くないのではないだろうか。

ならば、その良い部分を次にどう残すのか。

私はそこが非常に重要だと思っている。会社でも同じだが、長期間かけて作り上げた組織を、ある日突然「今日からあなたが責任者です」と新しい人に渡してしまえば、それまで積み上げてきたものが少なからず失われる。

人間関係がある。

暗黙知がある。

仕事の進め方がある。

数字には表れない、その組織独自の空気がある。

本当に継承したいのであれば、引き継ぐ期間を設ける方がいい。引き継ぐ側は、これまで何が機能していたのかを知ることができる。そして引き渡す側も、「自分がいなくなった後」を考えながら仕事をするようになる。

今回の代表監督交代は、まさにそれに見える。

森保監督の8年間を否定して新しい監督を連れてくるのではない。

森保監督の実績を認め、これまで作ってきたものを残したうえで、「さらにその先へ進む」ために次の監督へつなぐ。

ショック療法が必要なほど組織が壊れているわけでもない。

突然監督を代えなければならないアクシデントが起きたわけでもない。

であれば、このソフトランディング型の監督交代は非常に合理的だと思う。


■ 今回の選手選考にも明確な意図を感じる


今回の強化試合のメンバー構成も興味深い。

基本となっているのは、W杯を戦った選手たちだ。

そこへ、

W杯に連れて行きたかったものの枠の関係で外れた選手。

これからの代表を背負う可能性を持つ若手。

Jリーグで結果を出している選手。

そうした選手たちを加えている。非常にバランスがいい。

現時点では、森保監督のもとで長くプレーしてきた主力選手たちが、実力でも代表での経験でも一歩先にいる。長く一緒にプレーしてきた分、連携面でも大きなアドバンテージがある。だから私は、今回の代表で重要なのは「新しい選手だけを見ること」ではないと思っている。むしろ重要なのは、既存の主力選手と新しい選手をどう混ぜるかだ。

若く、これからさらに伸びていく選手。相馬選手、安藤選手、熊坂選手のように「次こそ絶対に代表に残る」という気持ちを持った選手。Jリーグで結果を出して呼ばれた谷村選手のような新しい存在。そこにW杯を経験した選手たちが加わる。

この組み合わせによって、チームの中に新しい競争と刺激を生み出そうとしているように見える。


■「安心できる環境」だから、新しい選手に目を向けられる


そして、ここでも森保監督続投の意味が出てくる。

新しい監督になれば、既存の代表選手たちも自分のことで精一杯になる。

新監督が何を求めているのか。自分は評価されているのか。どんなサッカーをするのか。

ポジションはどうなるのか。

まずそこへ意識が向く。しかし今回は違う。

監督も同じ。スタッフも基本的には同じ。

多少役割が変わったとしても、主力選手たちにとっては勝手の分かった環境である。

だから彼らは、自分自身の立場ばかりを気にする必要がない分、新しく代表に入ってきた選手達に目を向けることができる。

声をかける。プレーを合わせる。代表チームで求められるものを伝える。

そうやって既存の選手が新しい選手をチームへ取り込んでいく。

これは組織を強くするうえで、非常に重要なことだと思う。

特に日本人の組織には、このやり方が合っているのではないかとも感じる。

すべてを一度壊してゼロから競争させるのではなく、良い文化を残しながら新しい人を入れ、新陳代謝を起こしていく。

私は、今回の代表からそんな狙いを感じている。


■ ウルグアイ戦とベネズエラ戦で見えた使い分け


試合での選手起用も面白かった。

初戦のウルグアイ戦では、相手の力も考慮し、W杯経験組を比較的多く先発させた。

そこへ鈴木唯人選手、佐野航大選手、松木選手といった、現在欧州でも勢いのある若い選手たちを投入していく。いわば既存のチームの中へ新しい選手を入れる形だ。

ところが次のベネズエラ戦では、思い切ってW杯組を減らした。

鎌田選手を中心に置き、新しく代表に入った選手たちを多く使う。

「今度はあなたたちでやってみなさい」

そんな意図すら感じる布陣だった。

初戦で若手選手が活躍すれば、それを見た代表初招集組も当然刺激を受ける。相馬選手のように「絶対にここで生き残る」という覚悟を持った選手は、プレーからその必死さが伝わってくる。一方で鎌田選手や瀬古選手といった経験のある選手たちは、余裕と実力を見せながらチームを支える。若手だけでもない。ベテランだけでもない。W杯組だけでもない。新しい選手だけでもない。

経験のある選手が土台になり、そこへ新しい力を混ぜ、競争を起こす。

私は見ていて、「かなり狙い通りに進んでいるのではないか」と感じた。


■ 日本代表を「一つの組織」として見る面白さ


サッカー日本代表という組織は、普通の会社以上に難しい。

選手たちは普段、それぞれ別のクラブに所属している。代表活動で集まれる期間は極めて短い。その限られた時間の中で、人間関係を作り、戦術を理解し、チームとして機能しなければならない。しかも結果を求められる。

そこで新しい人材を発掘し、既存のメンバーと競争させ、なおかつ組織としての一体感も作らなければならない。

考えてみれば、かなり特殊で難易度の高いマネジメントである。だからこそ、今回の代表を私はサッカーだけではなく、「組織の人材育成」という視点でも面白く見ている。

良いものを残す。新しい人を入れる。既存メンバーが新しい人を支える。競争を作る。

そして徐々に次の世代へ主導権を渡していく。

これは会社でも、スポーツチームでも、本質的には同じなのではないだろうか。

もちろん、これから結果が出なければ批判も出てくるだろう。

森保監督の続投を疑問視する人もいるだろうし、W杯の時だけ盛り上がっていた人たちからすれば、今の強化試合にはそれほど興味を持てないかもしれない。

それでも私は、今回の日本代表を非常に興味深く見ている。

派手な「改革」ではない。

これまでの8年間を否定する「リセット」でもない。

積上げてきたものを認め、それを次へ渡しながら、新しい力を加え、進化させていく。

私はそこに、日本らしい組織づくりの一つの形を感じている。

そして、活動期間が極めて限られる日本代表でこれを実現しようとすれば、私たちには見えないところで、選手、監督、コーチ、スタッフの間に相当なコミュニケーションと努力があるはずだ。


W杯は終わった。

しかし、次の日本代表はもう始まっている。

4年後にどんなチームになっているのか。

その過程も含めて、これからの日本代表からますます目が離せない。

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