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出版物流の世界と私 4

仕事のやりがい、物流という事業の楽しさ、出版の世界の魅力。それらを私に教えてくれた当時の会社には今でも感謝してます。たられば・・があるのなら、この会社をずっと続けていても後悔はなかったのかなとも思います。


しかし、私自身の未熟さもあり、その会社を辞める事になりました。

在籍時からお客様である出版社さんに「ウチ来ない?」なんていう、お誘いを頂いたりする事もあって、出版社で仕事をしたい・・という気持ちが強く芽生えていました。

取次店も倉庫業も、サービス提供を事業とする業種であり、出版業界の主役はやはり出版社。そちら側を実際に自分で体験したかったのです。


転職先は、お誘いを頂いていた出版社さんや知古の方々には相談せず、自分で探す事にしました。そして、某音楽系の実用書を発行する出版社への転職が決まりました。

小さい出版社でしたが、営業部長という役職を頂き、2名の部下も居ました。


取次の仕入れ交渉(見本出し)、書店の店舗営業や本部営業等々、一連の営業業務をやらせて頂き、版元ドットコム会員にもなりました。

出張も経験しました。関西の大型書店や本部、取次の店売を訪問したりしました。

実用的な本を出していたので、爆発的に売れる・・という事は無いにせよ、面白い企画が出れば、数万冊単位で売れる本もあるジャンルではあったので、面白い企画が編集から出る事を期待しつつ、出版社の営業というものを学んで行きました。


しかし、結論から言うと、私はそこを一年で辞める事になります。


当時・・というか、その会社は昔から営業代行まで使って本を全国の書店に置いてました。

書店の隅っこの棚にヒッソリと数冊ある自社の本は目立たない。

書タレ(返品期限切れ)の意識も低いので、置きっぱなしの可能性が高い。

なので、偶々売れた本の補充注文と、営業が定期的に訪問し、改訂が出た古い本の入れ替え及び、新刊の注文を取ってくれば、安定して収入が入る・・という形。

再販委託制度、出版流通ならではの事業とでももうしましょうか。。


また、音楽系の本は楽器問屋ルートというのが存在します。楽器店やCDショップでの販売です。そちらの方が実売が見込めます。しかし、そのルートの営業は、姉妹会社に外部委託してるという状況で、自社が営業的に何かできるものではありませんでした。


この状況で、私が出来る事とは?

少なくとも私が増えた分、売り上げが増えないと効果はない。

どうしたものか・・と、悩みました。


そんな折、私は「倉庫業の事業化」をオーナーから命じられました。

どうやら、オーナーが私を雇った狙いは最初からそこだった様です。

自社倉庫を持ってたので、そこを活かして・・という考えでの事でしたが、営業倉庫許可を取得したり、設備やシステム投資したり・・という考えも予算もないまま、仕事を取って来いというもので、言葉には出せませんでしたが、浅はかな皮算用に思えました。


しかし、当時の私は従うしかなく、知人の伝手で仕事を探しました。

そして、これから出版社を立ち上げるという大手音楽出版社出身の方々と出会いました。

名前は出さないでおきますが、代表が2名という形でお二人とも編集者。


同じ音楽系の出版物で販売ルートも類似してる・・という点で、在庫管理を私に任せてくれる事になりました。

いよいよ第一弾が販売されると、驚く様なスピードで売れて行きました。

重版の連続です。人気著者で、それなりの部数は予想されたものの、凄い勢いでした。

そして、通好みの音楽本である第二弾も初版はあっという間になくなりました。

音楽本としては大成功と言える売れ行き。


在籍していた出版社では、重版は年に一冊あるかないか。

違い・・を感じました。そして、二人の編集者さんでやってる営業不在の出版社が営業3人いる自社の出荷数を2点だけで上回るという屈辱的とも言える現実を目の当りし、会社の全員がショックを受けていました。しかも、その出版社さんは、例のトランスビュー方式と類似したスタイルなので、返品がどっさり戻ってくると言うリスクも低い。

「商品力」の違いは明らかでした。


世の中には「埋もれるには勿体ない」と思う本も沢山存在します。

しかし、私は自社の本の中にそれを見出せませんでした。営業活動にやりがいを求める事もできませんでした。そして、倉庫事業をこの会社で発展させる・・という事には情熱を注げませんでした。私の出版社での経験は「苦いもの」で終わりました。


そして、「隣の芝は緑に見える」という事を実体験で学び、居場所を「物流」の世界に求める事に決めました。






                                   5に続く






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