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出版物流の世界と私 3



出版社同士のホールディングス化、他業種の会社に身売りをする出版社、民事再生や倒産・・というのも目立ちだしたのがこの頃です。そして、その流れと並行して、大手版元さんから独立した編集者さんが立上げる小さな出版社さんの数も増えていきました。


個人的には、「出版物の新たな魅力が世に広がり、本が見直される」・・・という期待を持って、それらの版元さん達の動向に注目していました。

小零細出版社が大手と変わらぬ販売機会を得られる様に・・と立ち上げられた「版元ドットコム」の存在も、新たな動きとして興味深いものがありました。前途のトランスビュー社さんも版元ドットコム初期からのメンバーであり、会員数の増加に貢献していました。


そして、取次店にも大きな動きがありました。返品の協業化です。

日販主導の出版共同とトーハン主導のトーロジです。それに伴う、版元倉庫への返品形態変更が行われました。


業界全体の課題であった返品率の増加。その負担の多くを被っている取次店が、物流コスト削減を計って協業化を推し進め、返品の物流に変化が起こりました。


結束された状態から、バケットや、オリコンに入って戻ってくる形に変わったのです。

(出版共同やトーロジと関係のない、専門取次店さんは往来通り)

そのバケットやオリコンは各協業会社の専用所有物であり、空にして返却しなければならないので、いつまでも滞納する事はできません。急いで再利用する必要がない商品でも、直ぐに仕分けて、格納していかなければならなくなりました。


結束であれば、商品検品後、良品在庫が豊富にある商品の仕分けは後回しにできるので、

倉庫側や出版社の都合で仕分け作業を進める事が可能でした。しかし、この変化によって、それが出来なくなりました。そして、返却用のオリコンやバケットの数量管理と置き場も必要になりました。倉庫側には喜ばしい変化とは言えません。


さらに、出版共同(日販主体)からは、「まとめ返品」での受品依頼が来ていました。

取次側で、商品単位集約の工程を通さず、商品も出版社もバラバラの状態でバケットに入れて返品する。その代わりに仕分け料を出版共同が支払う・・・というモノです。


当時、出版共同が提示してきた単価でシミュレーションをしてみたものの、全く採算に合わないので良い返事はできませんでした。先方からは、「ソーターを導入すれば採算が合う筈。ソータのメーカーを紹介する」・・という話も来ましたが、基本、倉庫業者は場所で稼ぐ事を考えます。100坪単位の場所を占拠するソーターを導入しても、対費用効果が出る様な収益性の向上は見込めませんでした。

第一、それならば取次店側が、自分達で仕分け作業が出来る筈。

当時の私には、虫の良い話にしか聞こえませんでしたし、会社の判断も同じでした。


それ以前の私は、協力会社や関わりのある会社に「無茶なお願い」をしていた大手取次側の人間でした。彼らには彼らの切迫した事情があるのも理解します。

そして、彼らに「お願い」される倉庫側の事情や本音を理解する術も有りません。


物流や商流における大手取次の役割・・・というのは、良くも悪くも日本の出版業界の肝となるものです。それは今も昔も変わらない事実だと思いますし、出版倉庫はその変化に大きな影響を受けるのは仕方無い事ではあると思います。自身の物流技術を向上する事で、収益を良くしていくしかないです。


その頃・・・アマゾンがe託サービスを開始しました。

最初のうちは、「様子見」で積極的に取組む出版社は少なかったものの、あっという間にその影響力が拡大していきました。


ついに小売店側も、取次を介さない仕入れを始めたのです。

「ネットで・・しかも、外資がそれをやるのか・・。」

恐怖というか、、反発心というか、対抗意識というか。。。

とにかく余りウェルカムになれない自分がいました。


確かに他業種では普通にある事です。メーカーと小売との直取引は別に驚く事ではありません。いずれにせよ閉鎖的で特殊な本の流通に新たな改革が起ころうとしていました。


取次への納品とは異なり、アマゾンへの直出荷は多品種小ロットです。

出版倉庫の出荷作業も影響を受けます。効率は当然下がります。


商流の変化に伴い、出版倉庫は今までの業量に対して、以前同様の収益が上がらない・・という事が明確になってきていました。しかし、業界全体が斜陽してきている状況。

価格競争も厳しくなり、様々な倉庫会社が生存競争を意識し出してる・・そんな空気感が漂ってきていました。


2000年代の半ばから後半にかけての時代。

今思うと出版業界を取り巻く環境が激しく変化してきた時代であり、今へと繋がるプロローグの様な時期だった様に思えます。


 

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