物流コンサルタント見た、出版業界の現在地
- zassoukh04
- 7月17日
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更新日:6 時間前

私の物流人生の原点は、出版業界でした。
私は、本を書店へ供給する「取次」と呼ばれる会社で約10年間働きました。
物流部門に配属されたことが、私の物流人生の始まりです。だから今でも、出版業界には特別な思いがあります。当時、私が勤めていた会社は売上約6,000億円、従業員4,000名を超える業界最大級の企業でした。レンタルCDやビデオを併設した大型書店が全国に広がり、コンビニでは雑誌やコミックが飛ぶように売れていた時代です。
会社はサービス品質と供給能力を高めるため、大規模な物流改革を進めていました。
巨大自動倉庫。
無人搬送機。
自動仕分け機。
自動梱包設備。
マルチソーター。
システム制御された物流オペレーション。
当時としては最先端の設備が惜しみなく導入され、今見ても先進的だったと思える物流センターでした。物流部門にいた私は、日々進化する現場に立ちながら、「物流が会社の未来を変えていく」という高揚感を感じていました。そして実際に、その物流力こそが会社の競争力となり、業界トップシェアを支える大きな武器になっていました。
しかし、それから約30年。
状況は一変しました。
紙の本の需要は大きく減少し、書店数も供給量も当時の半分以下になりました。毎日全国へ本を届けるだけの物量を失い、巨大な配送網は利益を生み出す資産ではなく、大きな固定費となりました。さらに、かつて最先端だった物流拠点も老朽化が進み、維持すること自体が大きな負担になっています。その結果、競合だった取次会社同士が物流協業を進める時代になりました。
もちろん、すべてを共同化できるわけではありません。各社の強みや独自サービスは残さなければならず、結果として最も非効率でコストの掛かる部分だけが残ってしまいます。
拠点統廃合やリストラクチャリングも進められていますが、大企業だからこそ簡単には動けません。その間にも出版市場は縮小を続け、物流2024年問題や燃料価格の高騰など、新たな課題が次々と重なっています。
書店も出版社も、当然ながら厳しい状況です。
書店は物販やカフェなど新たな収益モデルを模索し、出版社は電子書籍やコンテンツビジネスへ活路を求めています。
「紙の本だけでは生き残れない。」
業界全体が、その現実と向き合っています。
一方で、あまり知られていませんが、出版業界には「出版倉庫」という専門物流の世界があります。
出版物流は非常に特殊です。
出版物には再販委託制度があり、商流そのものが一般製品とは異なります。さらに、本は基本的にシュリンク包装されておらず、一冊単位で裸のまま流通します。そのため破損や汚損のリスクが高く、一般物流で使われるマテハン設備をそのまま活用することができません。
WMSにも独自の機能が求められ、人手に依存せざるを得ない工程も数多く残っています。
こうした特殊性から、他業種の3PL事業者が簡単に参入できず、出版物流は専業化が進みました。
しかし、その強みが、今では逆に弱みになっています。
市場が縮小しても設備や運営コストは簡単には減りません。
在庫は多品種少量化し、ECの拡大によって物流はさらに複雑になりました。
出版倉庫各社も少しずつ価格改定を進めていますが、荷主である出版社も苦しい状況です。
十分な価格転嫁ができないまま、利益だけが削られていく構造になっています。
さらに難しいのは、出版物流は特殊だからこそ、他業界への展開も容易ではないことです。
出版依存から脱却できた企業もありますが、ごく一部です。
今後、出版専業の倉庫会社は減っていくでしょう。
そして現在の料金水準で出版物流を請け負う会社も、少しずつ姿を消していくのではないかと思います。
今、出版業界ではこんな負の循環が起きています。
本が売れない。⇒ 書店が減る。⇒ 取次の物流コストが重くなる。
⇒ 出版社へ条件見直しを求める。⇒ 出版社も利益が出ない。⇒ 倉庫費用を削減する。
⇒ しかし倉庫も採算が取れない。⇒ 価格転嫁する。 ⇒ 本がさらに売れなくなる。
⇒ そして、また書店が減る。
このサイクルが止まりません。
私は、この業界は物流の影響を極めて強く受ける業界だと思っています。
それにもかかわらず、物流そのものは長年「裏方」として扱われ、経営戦略として十分に活用されてこなかったようにも感じています。
在庫最適化。
物流ネットワーク。
SCM。
物流DX。
出版業界がこうしたテーマに本格的に向き合うべきだった時代は、大分以前に来ていたんだと思えます。
残念ながら、30年前のように紙の本が大量に売れる時代は戻ってこないでしょう。
市場はまだ縮小を続けると思います。
だからこそ、流通と物流の仕組みそのものを変えていかなければならない。
そう感じています。
私の仕事は、物流全体を最適化し、効率化によってコストを下げることです。
これはまさに、現在の出版業界が最も必要としているテーマでもあります。
業界全体を変えられるなどとは思っていません。
そんな力もありません。
それでも、物流を通じて少しでも出版業界の力になれないか。
そんな思いは今でも持ち続けています。
今回、この文章を書いたのは、お世話になった会社や多くの知人が厳しい状況に置かれている現実を見て、どうしても自分の思いを整理したかったからです。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


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