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物流センターの業務改善とDX化

DX化…積極的に慎重に!


省人化やDX化への関心の高さを反映し、’最近の物流総合展は大盛況です。

5年程前迄は、創意工夫をこらした現場作業の軽減・効率化を計るアナログな道具や用品もかなり出展されていて、大掛かりなマテハン機器以外にも多様な発見がありました。

特に今年の総合展に関して言えば「DX化・ロボテックス」一色と言っても過言ではない様相でした。


当たり前ではありますが、最新機器の導入や倉庫管理システムのリニューアルについての相談を頂きますし、私自身、最新の機器について調べるのは好きなので、色々研究はします。

ただ、導入に関しては積極的な推進はしていません。むしろ可なり慎重派です。

物流業界の界隈では「人手不足」を理由に「物流DX」という言葉が普及していますし、「省人化」と「システム(情報)対応力」というのは力を注ぐべき最も重要な事項の一つと考えています。其れでも慎重になるのは「ミスマッチ」が起こり易く、後戻りが出来ないからです。


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マテハン機器導入にせよ、倉庫管理システムの導入やリニューアルにせよ、大きな投資となります。思った程の効果が出なかった‥と言うのならまだしも、増員が必要になったり、保守・維持で固定コストも上昇と言う、全く期待と逆の結果となる’事も珍しくありません。


下記に「ミスマッチ」が起こった失敗事例を記させて頂きます。

自分達に適した活用が出来れば大きな効果を生むモノですが、落とし穴もあります。

参考にして頂ければと思います。


「全体最適」と言う視点で


多品種小ロットが自社の扱う商品の特性‥と、認識しているA社さんが、小型自動倉庫を導入しました。天井高を活かし切る事が出来、搬入時に商品と数量を登録すれば、出荷時には自動で搬出されてきて、其処から必要数をピックアップすれば良いという、比較的今多く宣伝されてる様な代物です。その機器を提案した販社が言う通りの性能はコミットされていましたので、利用スペースにおける保管数量もアップし、ピックアップに掛かる人数も減りました。しかし、導入前より効率は悪化し、支出も大幅増となり、その改善の目処が立たないまま、現在に至ってます。


このマテハンは「多品種・小ロット向け」で、3才箱サイズ程度の「専用バケット」での保管を前提としています。利用する為には、商品をバラの状態(またはボール)にしないとなりません。ケースで入荷した商品を、開梱して詰め替える‥と言う作業が発生します。そして専用バケットを管理する必要があります。稼働率によって増減する「空き」の専用バケットを物理的にも数値的にも管理するという作業が追加される事になります。


更に、保守メンテと言う、今迄ないコストが毎月発生します。

保守メンテ費用は、A社さんの物流拠点の地代家賃で換算すると、固定費だけで180坪分掛かってるそうです。更に、今迄必要なかった詰め替え用の作業スペースと「空き」の専用バケットに使うスペースも要しています。


そして更に、出荷作業に関しても誤算がありました。

自動倉庫からの搬出後は、「人」が必要数をピックアップし、商品をスキャンで検品し、梱包へ‥と言う工程なります。歩いて取りに行く変わりに自分の手元に必要な商品が届くという事以外は、作業負荷は大きく変わりません。しかも、この会社さんの受注の特徴は一件の注文当りの点数が多い‥という所にありあます。

自動倉庫から出てきた専用バケットが、ピックアップの順番を待って行列をなしてしまうのです。コレが各搬出口で起こっています。後作業や機器の性能上、1件の受注をピックアップする工程は、他の人が手伝いたくても手伝う事が出来ませんから、業量や件数、点数が増えても只管決まった人数で処理するしかありません。


人は減りましたし、ピッキングで歩かないで済む様になりました。

しかし、応用が利かず、決められたスピードと手順でしか作業が出来ません。

集荷便に乗せる為には永遠と時間を費やす訳には行きません。結果的に納期に間に合わす為、中量棚のピックエリアを増設して業量を分散。今迄通りの紙のリストでのピックアップを並行して行う事になりました。


マテハン機器の機能特性、自社の商流の特性、前後の工程等をしっかり分析検討していれば起こらない事だとは思いますが、実際にこういう失敗事例は珍しいものではありません。

自社の物流工程全体において、どの様なメリットとデメリットを生むのか・・を多角的に分析検討し、俯瞰的な判断基準に基づいて導入可否を決める必要がります。


「現場で起きてる事」の把握

保守サービスの終了に伴い、オンプレからクラウドへのリニューアルを行ったメーカーB社さん。実績のある開発会社さんなら・・と言う事で、物流会社の導入事例も多く、評判の良いシステムを販売している開発会社さんのWMSをベースにしたパッケージ開発を行う事となりました。


この開発プロジェクトを担当する事になったのは、「PC操作が得意で、IT用語に精通してる」優秀な中堅社員のCさんでした。

Cさんを主体にセンター長や物流部門の部長、Cさんの助士的役割を担う入社3年目のDさんが開発会社とプロジェクトを進める事となりました。CさんとDさんは現行のシステムと、開発会社のパッケージソフトの機能を比較分析し、過不足を抽出しながら詳細な要件を定義していきました。センター長と部長さんは二人にアドバイスをしながら進行を見守る‥と言う様なレベルの関わり方で、実働は二人に任されてる様な状態でした。


そして、いよいよリリースも近づく段階となり、実際の事務オペレーションをするスタッフさんに機能を説明し、デモ画面をお披露目する事になりました。


「これじゃー私達帰れなくなります」


事務のスタッフさん達は一同に不満と憤りを口にし出しました。


様々な機能が追加された分、一つの処理を完了するまでの動作や画面が増えてしまい、処理工数が増えてしまったのです。それよりも’、大きな不満を感じさせたのは、時間的負荷の大きい「同梱書類」「作業依頼書」の作成、伝票フォーマットや出力方法の煩雑さが原因の「伝票仕分け作業」、エクセルを駆使した「データ加工業務」等々、既存システムが対応してない事務作業の軽減が考慮されてる機能が何一つ無かった事でした。


「クラウドへの乗せ換え」が念頭にあったプロジェクトの面々は、既存システムの機能を把握する事はしっかり行いました。しかし、事務スタッフが一日の中で、どんな事を何の為に行っていて、どれだけ負担となっているかに誰も意識を向けていなかったのです。


案の上、リリース後の事務処理スピードは大幅に低下。

長時間の残業の日々が続く中。疲弊し、失望したスタッフ達が相次いで退職していく事になりました。


一度リリースされたシステムの大幅な機能変更は当然大きな費用が掛かります。

極一部の改修を行う事は出来たものの、本来必要とされたシステム機能の実現には程遠く、新しく採用された事務員さんもなかなか定着せず、常に募集を出してる状況が続いています。「次のリニューアル待ち」という諦め半分な状態で業務が遂行されています。


多くのシステムリニューアルや導入プロジェクトにおいては、事務スタッフの代表が参加したり、事務担当者の意見や希望を取り入れます。「事件は現場で起きてる」ので、現場を軽視すれば現場が苦労する事になります。結果としてお金や人材を失う様な事に発展します。


失敗事例の前者はマテハン機器のミスマッチ、後者は開発における要件(必要な機能の把握)提示のミス(漏れ)・・となりますが、双方ともDX化に付随した製品やサービスを提供する企業さん側の問題ではなく、依頼した側に問題がある‥と言える事例です。


DXをすれば、何かが良くなる訳ではなく、その可能性が膨らむ・・だけです。

嘘の様ですが、本当に起こってしまってるのです。。

この様な状態からのリカバーのサポート・・というニーズが少なからず存在します。

失敗は成功の元‥とは言いますが、リスクが大きい事なので失敗しない方がいい部類の事と痛感しますので、記させて頂きました。新しい技術は積極的に慎重に!





 
 
 

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